こんな調子で、月曜日だっていうのに気分は右肩下がり。 とりあえず愛車にまたがり、風を切って学校へと急ぐ。 短めのスカートがひらりと浮いたけど気にしない。 オシャレはガマンって、ピーコが言ってたもん。
見慣れた校舎が近づいて来ると、ペダルに乗せた両足にも一気に力が入る。 よし、これならなんとか間に合いそう。ほんのちょっと口角を上げた私にお天道様も味方してくれたのか、雨音が遠ざかる。 気を良くした今ならいける。門を抜けて、ギリギリセーフ!のはずだった。
「そこの君、止まって。」
「・・・はい?」
「そう、君だよ。」
やっぱり今日はツイてない。 風紀委員が検査をしていて、よりによって風紀委員長様に呼び止められた。 この人、苦手なんだよね。 得意な人はそういないと思うけど。 あ、沢田が意外と仲良しなんだっけ? ファミリーがどうとかって、獄寺が言ってた気がする。 って、今はそんなのどうでもいいこと。
「そのスカート丈は校則違反だ。」
「はあ、スミマセン。」
「2-A 、僕のブラックリストに載せておこう。」
「え?それだけで、ですか?!」
「何か文句でもあるのかい?」
「い、いいえ。」
「このことは君の担任にも報告しておくから。さあ、行って。」
前言撤回。ニガテからキライに格上げしよう。 何が風紀委員長よ。 自分は勝手に学ラン着てるし、バイクだって乗りまわしてるし、授業だってろくに受けてないくせに。
風紀委員長様のおかげで、午前中の気分は最悪だった。 担任からのお咎めがなかったことは唯一の救いだけど、それにしても腹立たしい。 楽しみにしてたお昼の時間だってテンションは上がらなくて、午後の授業はサボることにした。 沢田に呼び止められたけど特に気にしない。 京子が心配そうにしてたのは、ちょっと胸が痛いけど。
屋上で昼寝、のはずが、事態は急変。 その人は、学ランを風になびかせながら欠伸をしている。 気付かれないうちに教室へ戻ろうと思った瞬間に、目が合った。 3回目だけど、今日はツイてない。 こんなところで会うなんて、きっと神様の八つ当たりだよ。
「君、なにしてるの。」
「き、気分が悪かったので、外の風を吸いに来ました。」
「ふうん。」
へえ、この人も笑うんだ。初めて見た。 でもね雲雀さん、どうせなら、もっと爽やかに笑ったほうがいいですよ。 そんな捻くれた笑顔、ただの嫌味にしか見えませんから。 心の中で、そっと悪態をつく。声を大にして言ってやりたいけど、私も命が惜しい。
「、放課後、応接室へ来るように。」
「何故、でしょうか?」
「君には少し指導が必要だと思ってね。来なかったときは、わかってるね?」
神様お願い、他の八つ当たりならいくらでも受けます。 だから、この人のブラックリストから私を消してはいただけないでしょうか? はい、以外の返答を与えない黒のオーラ。 相変わらずの嫌味な笑顔を残して、その人は校舎の中へと消えていった。 授業開始を告げる鐘の音が、死へのカウントダウンに聞こえた。 ツイてない、なんて可愛いものじゃない。放課後まで、あと4時間。
やあ、遅かったね。待ちくたびれたよ。
スミマセン。
なぜ僕に呼び出されたか、わかっているかい?
さあ・・・。
君は今日一日、何を考えていたんだい?
それはもう、雲雀さんのことばかり考えていました。
ワオ、それは光栄だ。僕の想いが通じたのかな?
は?
今朝、君の名を呼んだ。初対面で、フルネームで、だよ。
はあ。
何を意味するか、わかるかい?
えーっと・・・
言っておくけど、僕のブラックリストには君しか載らないよ、。
え?
さあ、指導を始めようか。
ちょ、待ってください、ちょっと!
公開日:2010.01.24
title by AnneDoll